<< 連載27 キャラクターの目的、意図、焦点。 | main | 連載29 隠された仕掛け―――メタファー、フォーシャドーイング&ペイオフ。 >>

連載28 調整装置としてのアクション動詞。


【座付き作家からの質問】

 実演の際に頼りとなる“特効薬的演出ツール”一式を、調整装置と呼びます。(スタニスラフスキーの『魔術的もしも』などが有名です)

 今回は、その中でも特に使い勝手が良い(と私が思っている)『アクション動詞』について、小松Pなりに解説して下さい。

***   ***   ***   ***   ***   ***   

【小松愛の回答】

 演出家が「このシーンうまくいっていないな」と感じたときに、調整装置として的確なアクション動詞を放り込み、役者の演技を変化させようという演出技法があります。例えば主人公が友達から借金するシーン、友達に対する主人公の行動(アクション動詞)が「懇願する」なのか、または「説得する」なのか、さらには「脅迫する」なのかで、役者の演技も変わってきます。

 アクション動詞は「そのシーンにおけるキャラクターの目的」と重なるケースも多々ありますが、物語内の論理的整合性にしばられる必要はありません。ストーリー上は敵役であっても“色艶”を加えたい場合、調整装置として『告白する』や『抱きしめる』というようなアクション動詞を使うこともあり得ます。

 ストーリー上の設定をこのシーンだけ無視して演技をするというのは内面重視型の演技スタイルだと、なかなか受け入れ難いものがあるかもしれませんが、私自身は非常に分かりやすく、使いやすいものだと思っています。ただ、即座に演技を変化させる対応力が求められるので、そこが最も難しいところです。

 基本的には演出家が役者の演技を自分のイメージに近づけるために使うものなので演出家が考えるものです。役者が自分で考えてもかまいませんが、それを演出家に提案するかは団体のルールによってでしょうか。
 
 このアクション動詞の選び方ですが、目的語を必要とする他動詞であることが良いとされています。他動詞は相手に行うことなので「歩く」や「食べる」はあまり好ましくないということです。
 
 また、『怒鳴りつける』とか『説教する』など感情と身体運動の両方を伴う言葉が良いとされています。例えば『信じる』というのは相手に行うことで感情表現も伴っている動詞ですが、黙っていても信じることはできるので、動きが小さくなってしまう可能性があります。

 
 では、その使い方ですが『直接的な使い方』と『間接的な使い方』があります。『怒鳴りつける』とか『説教する』といったアクション動詞は、そのまま演技に転用できます。
 
 『圧力をかける』や『優位に立つ』などは解釈に広がりがあります。そういったものは、そのアクション動詞をダイレクトに使うよりも、『行為の意図』として再設定し、そこからさらに他のアクション動詞を導き出すことも可能です。例えば『脅す』『いじめる』『大声でなじる』『馬鹿にする』等々。


 アクション動詞は表現を変えるため、演出家のイメージを具現化するためのスパイス位に考えています。他動詞というのは英語だと分かりやすいのだと思いますが、日本語だとしっくりこない部分もあります。あまり難く考えずに動詞ならいいかな、くらいの感覚で使えば良いと私は考えています。

***   ***   ***   ***   ***   ***   

【座付き作家からの回答】
 
 アクション動詞といえば、ジュディス・ウェストンさんやステラ・アドラーさんを思い浮かべる方が多いと推測しますが、理想現実では諸先輩方が推奨する使い方よりも、もう少しシンプルなアプローチを探究しています。

 一緒に稽古している人間として断言しますが、『アクション動詞』は小松Pの得意分野。今後、その腕をさらに磨いて、“アクション動詞師範”を目指してもらいたいです。