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連載27 キャラクターの目的、意図、焦点。


 【座付き作家からの質問】

 ドラマの基本構造は『目的→障害→葛藤』です。この構造を実際の演技に生かすため、場面ごとに“キャラクターの目的”を整理する術が有名ですが・・・・・・、そのあたりのことを小松Pなりの言葉で解説して下さい。

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【小松愛の回答】

 
シナリオにおいては、ドラマの葛藤は対人関係を使って描かれることがほとんどです。 そのため通常、登場人物は何かしらの目的を持って場面に登場するわけです。 実際の演技でもシーン毎にキャラクターに目的を持たせ、障害や葛藤を表現すると、よりドラマティックになると言われています。その目的をシナリオ解析の段階でしっかりと把握しておけば、役者はシーンを演じやすくなりますし、少なくとも何のために登場してきたのか分からないという状態を避けることができます。

 
 世の中には色々なライターがいるのでドラマ性を否定した作品や、目的を持たないキャラクターが登場するシナリオもあります。これまで読んだシナリオでも「このキャラ、なんで出ているんだろう、必要あるのかな?」なんて思ってしまうキャラクターもいました。実際、目的がないと居なくてもいいキャラクターになってしまうので映像作品なら間違いなくカットされることでしょう。演劇であれば舞台上を華やかに見せたいというメタレベルでの必要性は理解できなくありませんが、演出家とよく話し合って、その場面に最適な目的を持たせた方が演じやすくなるとは思います。


 シーン毎におけるキャラクターの目的の探し方は、

 
 〔榲……そのシーンでやりたいこと、やろうとしていること。
 意図……その目的を採用した理由。
 焦点……その場面で一番気にかけている対象、フォーカス。

 と、3つの視点で考えると整理しやすくなります。


 例えば、通勤に使う自転車の鍵を探すというシーンであれば、目的は鍵を探す、自転車に乗る、会社に行く、給料をもらうため……と考えればどんどん流動してしまうので、目的と一緒に、意図と焦点も考えると整理しやすいでしょう。それでも目的・意図・焦点は解析する人によって多少の差異が出てきます。


 目的 自転車の鍵を見つけること 
 意図 会社に行くため
 焦点 上司との関係

 目的 会社に行くこと
 意図 会議に遅刻しないため
 焦点 時間

 目的 家を出発すること
 意図 会社に行くため
 焦点 自転車の鍵


 どれが正解というわけではありませんがプランを出して役者と演出家でよく話し合っておきズレを少なくしておくことが大事です。


 目的探しは他のキャラクターを巻き込むと良いと言われています。共演者を目的の対象にした方が、リレーショナルコンフリクトがもっとも分かり易く演じやすいんだそうです。共演者を巻き込んだ目的を考えること自体が私にとっては障害、葛藤ですけど。 さらに言えば、共演者を巻き込み、よりハードルの高い目的の方がシーンをドラマティックにすると言われています。


 同僚に迷惑をかけない<同僚を安心さえる<同僚を喜ばせる……などでしょうか、 目的探しが苦手なので、例えがうまくなくてすみません。目的は1シーン1目的くらいを目安に、キャラクターの目的・意図・焦点をしっかり把握して実演に挑む準備をしておくことが大事、というところです。


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【座付き作家のコメント】
 
 詳細な説明、ありがとうございます。大変わかりやすかったです。
 一見単純な概念でありながら、『目的・意図・焦点』はなかなかに奥が深く、かつ実践的なテクニックです。これからも積極的に研究を重ね、100%自分のものにして頂きたいです。