<< 連載24 登場人物の関係性。 | main | 連載26 ビートの分割、移行の論理性。 >>

連載25 見た目の出来事とドラマ的な出来事。


【座付き作家からの質問】

 「そのシーンの出来事は何か?そこで何が起こっているのか?」をきちんと伝えられてこその役者であり演出家です。そのためにはシナリオ解析の段階で、シーンの出来事をしっかりと把握しておきたいところ。

 今、小松Pが知っている範囲で構いません。出来事の解析法を説明してください。


***   ***   ***   ***   ***   ***   ***   


【小松愛の回答】

 シナリオを読めば判断できる情報である見た目の出来事と、読む人の解釈によって変わるドラマ的な出来事に分けて考えるようにしています。

 見た目の出来事は誰が読んでも、大体同じようにピックアップできる情報です。順応した出来事とか文字通りの出来事といわれることもあるようです。

 ドラマ的出来事は、そのシーンに内在しているドラマ的な要素をピックアップします。作者がそのシーンを描いた理由、そのシーンでお客さんに見せたいものともいえます。


 例えば、野球の試合のシーンがあったとします。どこチームの試合だとか得点数や状況は誰が読んでも同じように判断できる情報、見た目の出来事です。

 ドラマ的出来事は基本的には主人公を中心に置くことになります。相手に勝負を挑むだとか、自分自身と戦うとか、チームメイトに感謝するだとか、どんなシーンかは読む人の解釈によって変わります。


 ドラマ的出来事の解釈が演出家と役者の間でズレていると、実演において何度やってもOKが出ない状態に陥ってしまうことがあります。大事なのはドラマ的出来事の解釈をしっかり演出家と共有させることですが、ドラマ的出来事にリアリティーを持たせるのは見た目の出来事です。


 見た目の出来事がストライクを取ることであれば、フォームやボールのスピードはどうであってもストライクさえ取れればシナリオに則っていることにはなります。しかしドラマ的出来事が相手に勝負を挑むであれば、やはり道具の扱い方、投げ方、ボールのスピードなどディテールにこだわらなければ嘘っぽくなってしまいす。


 ドラマ的出来事にリアリティーを持たせるためには、見た目の出来事も把握しておかなくてはいけません。スポーツや楽器の扱いがあるような職業的特徴が強い場合は、実務面でどれくらいの練習時間が必要か、できるできないを見極めスタントマンを使うといった話し合いをしておくことも大事です。


 いろいろな解析法であるとは思いますが、解釈のズレを減らすため、出来事を見た目の出来事、ドラマ的出来事に分けて考えています。
 

***   ***   ***   ***   ***   ***   ***   


【座付き作家からのコメント】


 ドラマ的出来事とは、すなわちそのシーンの意図であり、ドラマをドラマたらしめている要素です。
 しかし、役者がそれをダイレクトに表現し過ぎると、場面全体がどうしても『説明っぽく』なってしまいます。時にはむしろ『見た目の出来事』に集中した方が、観客の心にストレートに響く場面が創れたりします。
 演技っていうのは、本当に奥が深いですね。