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連載22 バックストーリー(バックグラウンド)の扱い方。


【座付き作家からの質問】


 役者さんの中にも、キャラクターのバックストーリーを重視する方とそうでない方がいます。『登場人物の履歴書を作成することは、キャラクター創りに有効か否か?』という論争を、理想現実の稽古場でも行ったことがありますよね。

 小松愛の考える『バックストーリー論』を教えてください。


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【小松愛の回答】


 まず、理想現実でのバックストーリーの定義ですが、物語が始まる前の時間軸というものに限定しています。


 浦島太郎であれば、亀を助ける前の出来事や浦島太郎の普段の生活を探ることでしょうか。その人物を理解する上で、キャラクターの過去を探ることは、重要なヒントになることもあります。自分には理解できない人物と出会った時に、その人の過去を探ることで何かがわかることもあるかもしれません。


 そういったことを重要視して履歴書を書くというキャラクター創りがあるようです。私としては、キャラクターを解釈するための一つの方法くらいに考えています。それだけでキャラクター創り終わるわけではありませんし、実際、私は履歴書を書くということはしません。


 もちろん、脚本上で指定されたバックストーリーや、脚本から創造できるバックストーリーはきちんと把握しておくことは必要です。ただ、脚本には登場しない過去を役者が想像する(アクターズシークレット)は、やりすぎると演出家のイメージとずれてしまう可能性があります。役者は自分の役を格好良く見せたいものですからね。


 過去の出来事を並べるよりも、重要なのは、「過去の出来事を今現在のキャラクター自身がどう認識しているのか?」だと思います。


 確かに過去の出来事によって、そのキャラクターの価値観や感情が形成されます。ただ、役者が表現しなくてはいけないのは、キャラクターごとの価値観や感情によって変化する「物事への関わり方やリアクション」です。


 私自身は表現を変えるためのツール、調整装置としてバックストーリーを使うことはありますが、履歴書を書いたり過去を想像したりすることで、何かが変わるかというと、少し疑問です。


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【座付き作家からのコメント】

 極端なまでにバックストーリーを重視する役者さんもいますが、小松Pはその点冷静な立ち位置をキープしている感じですね。なるほど、よくわかりました。
 
 ちなみに、演出家の中には、「そのシーンが始まる直前、登場人物は何をしていたか?」ということをバックストーリーと呼ぶ方もいますが、理想現実では、その手のバックストーリーを一括して『オフ・カメラ・ビート』(カメラが回っていないビート)と呼ぶようにしています。
 
 バックストーリーのみならず、このオフ・カメラ・ビートについても、シナリオ解析の段階で出せるだけのアイデアを出しておきたいところですね。