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連載19 観客を惹きつけるための仕掛け―――ルーティングインタレスト。


【座付き作家からの質問】


 ルーティングインタレストという用語について説明してください。



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【小松愛の回答】


  興味の基や核になるもの、になるかと思います。シナリオや映画には、観客が「登場人物を思わず応援したくなるような仕掛け」というのが、実はたくさん埋め込まれています。観客を飽きさせないため、商業的にもヒットさせるためなど、ストーリーアナリストがチェックする項目のひとつです。キャラクターに、ちょっとした欠点を持たせるとか、挫折を経験させる、目標を持たせるなど色々な方法があります。


 ただ、理想現実ではキャラクターの魅力くらいに捉えています。ルーティングインタレストを考える時は、演じる立場や自分とリンクできる部分を探すのではなく、物語全体を観客視点で考えるといのうがコツです。俗に入り込んでしまうというか、役者は自分自身に近づけてキャラクターを解釈する傾向があるものです。冷静に考えるためにも、観客視点での魅力を探っておくのは有効な作業です。


 お客さんの立場と言っても、それを想像するのは、もちろん自分です。子供が観たらどうかとか、お年寄りが観たらどうかとか、まずは少し違った角度からイメージしてみるということで良いかと思います。

 発展すると、シナリオ構造上、どういったキャラクター性を求められているのかを考えるきっかけにもつながっていきます。例えば最初と最後にちょっとだけ出演する役だったとします。物語全体で考えると、主人公の成長した様を明確にするという役割が見えてくることがあります。その場合、自分の役を情感たっぷりに演じるよりも、主人公のリアクションを目立たせるような演技プランを考えてた方が、そのキャラクターもより魅力的に見えると思います。

 それから、「客を意識するな」と演出家が言うことがあります。演技に集中させることを意図している場合、緊張をほぐすことを意図している場合などあるようですが、観客視点で俯瞰的に物語を読み、キャラクターの魅力を考える作業というのは、とても大事です。



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【座付き作家からのコメント】


 心躍らされる物語には、魅力的な登場人物がつきものです。ルーティングインタレストというと、とかく主人公や副主人公だけが対象になりがちですが、脇を固める登場人物たちの中にも、魅惑的な人物はたくさんいるでしょう。
 各々のキャラクターが持つ魅力をしっかりとつかまえて、的確に表現する──、それが役者業の面白さであり、難しさですね。