<< 連載17 心の中の話(信念・哲学)と、客観的情報(態度、行動)の整理。 | main | 連載19 観客を惹きつけるための仕掛け―――ルーティングインタレスト。 >>

連載18 キャラクターの背骨と、3Dキャラクターという視点。



【座付き作家からの質問】

 前回に引き続き、キャラクター解析についてのお話です。
 『キャラクターの背骨』、及び『3Dキャラクター』という概念について解説して下さい。


***   ***   ***   ***   ***   ***   ***


【小松愛の回答】

 
 キャラクターの解析をするときに、キャラクターの背骨、3Dキャラクターというカテゴリーでの考え方があります。


 まずは背骨についてご説明します。


 理想現実では、スルーラインと言うことが多いのですが、キャラクターが自分の人生において最も求めていることだとか、キャラクターのコンセプトという意味で使っています。

 
 背骨というのは、基本的に物語を通してずっと変わらない、キャラクターの信念や哲学、コンセプトだとイメージしてもらえればよいかと思います。

 同じキャラクターなのに、シーンごとにキャラクターがコロコロ変わってしまうと、見ている側は違和感を覚えてしまうと思います。演じる側としても、キャラクターに整合性や統一感を持たせる必要があります。背骨を決めるのは、こうしたブレをなくそうという技法のひとつです。

 例えば傘地蔵のお爺さんの背骨を考えると、

 
 愛する人を幸せにすること
 自分が幸せになること
 目の前の問題から背を向けること
 貧乏な自分を許してもらうこと
 今できることを精一杯やること

 
 と、いうように、同じ物語でもいくつか候補が挙げられます。
 背骨を何にするかは解釈なので、人によってマチマチです。最終的にどの背骨を使うかは、演出家に決める権限があるかと思いますが、同じ背骨でも、キャラクターが一貫して持っている信念や哲学、アイデンティティという意味で使われたり、超課題、超目標、目指すべきゴール、キャラクターのコンセプトという意味で使われたり、色々な意味で使われることがあります。

 人によって背骨という言葉の指す内容が違うことがあるので演出家が意図する背骨をしっかり理解することが必要です。


 もうひとつの、3Dキャラクターは、より立体的なキャラクターを創るための方法です。

 理想現実では、

 理性的側面・・・思考、哲学、世界観、等等(頭の中で考えること)
 感性的側面・・・感情、気質、性格、等等(心の中の状態、気分)
 行動的側面・・・行動の種類、アクション動詞、等等(見た目の結果)

 
 このように区分を3つに分けて考えます。

 ちゃんとしたシナリオライターであれば、この3Dキャラクターをしっかり考えながらシナリオを練っていますし、演出家もきちんとそれを拾い出し、3Dキャラクターを考えているものです。
ただ、これはとっても難しい作業なので、役者の立場であれば前回の2方向からのアプローチで充分だと思います。



***   ***   ***   ***   ***   ***


 【座付き作家のコメント】


  『背骨』という用語は演技界の定番でありながら、人によって使い方が違うので注意が必要ですね。

 3Dキャラクターは基本的に脚本家のテクニックなので、役者さんがそこまで勉強する必要はないでしょう。でも、勉強して損はないです。