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連載16 葛藤(ストラグル)こそがドラマの基本。主人公は何に苦しんでいる?


【座付き作家からの質問】

 シナリオに欠かせない要素……、それは『葛藤』です。登場人物たちが葛藤するからこそ、そこにドラマが生まれるのです。
 葛藤について、(特に主人公の観点から)詳しく説明してください。


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【小松愛の回答】

 物語の主人公は、何かしらの目的を持っているものです。
 
 「高き霧の壁」の榊原比沙子であれば、世界中のウィルスを根絶させる、とか。
 「Deep Summer TREASURE」でのジムであれば、海賊からフリントの宝を守るとか。

 比沙子のように本人が最初から持っている能動的な目的もあれば、ジムのように巻き込まれて途中から目的を持つ場合もあります。いずれにせよドラマというのは主人公が何かしらの目的を持っていることが前提です。


 そして簡単に目的が達成されてしまえば物語はすぐに終わってしまいます。基本的には、アクト1で目的がセットアップされ、アクト2で目的達成を阻止するような障害が出てきます。数々の障害にぶつかることで主人公は葛藤します。それに対して主人公が新たな行動をとることで、ドラマが動き出すわけです。



 役者の仕事は葛藤を表現することと言えるかもしれません。葛藤を的確に表現するためには、役者は主人公が何に苦しんでいるのか?主人公は誰と戦っているのか?という情報を、演出家ときちんと共有することが大事です。葛藤の解釈が演出家の解釈とズレたまま実演に入ると、時間や労力のロスを招いてしまいます。



 さらに、シナリオの世界ではリンダ・シガー氏が、葛藤を生み出す対立構造を以下の5つに区分しています。


1.インナーコンフリクト…内的葛藤、主人公の内面での葛藤。真実を告白するか、しないか、など。


2.リレーショナル・コンフリクト…相対的葛藤、対人関係。桃太郎の鬼のように分り易い敵の場合もあれば、親友でライバルといった関係などもあります。


3.ソーシャル・コンフリクト…社会的葛藤、世間の習慣や悪習、体裁など。


4.シチュエーショナル・コンフリクト…状況的葛藤。酸素のない潜水艦の中や、自然災害といった状況事態が葛藤を生み出すもの。


5.コズミック・コンフリクト…絶対的葛藤。神対人間といったようなもの。

 


 コンフリクトは対立構造という意味です。ソーシャル・コンフリクトも、社会のメタファーのようなキャラクターが登場することで、リレーショナル・コンフリクトに落とし込んでいる場合も多いですし、突き詰めれば全ての葛藤はインナーコンフリクトになります。障害が巧みに盛り込まれているのが理想的なシナリオですが、障害のハードルが高すぎても、やりすぎという感じになってしまうので注意が必要ですね。役者の場合は「主人公の目的→障害→葛藤」という関係をしっかり押さえておけばよいと思います。

 
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【座付き作家からのコメント】

 目的(欲求)はあるものの、それを阻止する障害が山のように並んでいる──、だからこそ主人公は苦しんだり努力したり闘争したりするわけですよね。そして、その葛藤こそがドラマなわけです。

 シナリオライターは『いかに魅惑的な葛藤を生み出すか?』で悩み、役者は『その葛藤をいかに演じるか?』で悩む。個人的な見解ですが、映画や演劇は本質的にチーム競技だと思います。表現芸術を志す人間として、常にナイスなチームプレーを心掛けたいです。